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実験 #校長室からの風景

 私が高校時代に化学をならったA先生、ある日、めったにない実験の授業をやるというので、化学実験室に集合。
先生「水素の発生実験をやるから前に集まれ~」
当時は、先生の机の周りに集まり師範実験を見るスタイル。男子45人もいるクラスでしたから、もう、後ろにいるほうはよく見えません。
先生「塩酸の中にマグネシウム入れっと、泡ぶくぶくぶく~ってでっから、この管を水の中に突っ込んで、ぽこぽこぽこ~って出てきた泡を、水の中に入れた試験管で集めんだ」
まあ、水上置換のことなんですけど、とりあえずぶくぶくをぽこぽこさせて集めることはわかりました。
先生「試験管いっぱいになったら、試験管の口を指で押さえて持ち上げて、マッチをシュッって擦って、近づけっとドカンって爆発すっかんね、見てろ」
ポン(←実際の音)生徒全員爆笑。

とにかく、後ろのほうにいた私(校長)の班は、ブクブクのポコポコのシュッのポンになればいいだろうぐらいの理解で、実験を始めます。大量のマグネシウムを試験管に突っ込んで、そこに塩酸を注いだものだから、なんか先生の言っていたオノマトペと感じが違う、盛大な最強のブクブクブクブク。

どうもポンでは済まないドカンの危険があったらしく、その後、昭和式でみっちりみっちり、ぎったんぎったんに叱られました。

さて、時は過ぎて、現在の化学の授業はというと、

生徒は前に集まりませんね

師範実験は大きなプロジェクタで手元の様子も詳細にわかります。ブクブクのポコポコとかの表現に頼らなくていいんですね。

そして、この日の授業は、何の実験かわかりません。わからないというよりも、実験の方法をどうするか各班で検討してやりなさいという授業。

金属イオンの定性分析
謎の液体の成分を探れ!

そのためには

これまでの知識を総動員
手法について議論
教科書を再確認

これなら、マグネシウムを大量に試験管に突っ込むなんていうことは起こりませんね。

方針が決まったら、いざ実験!

と、その前に安全ゴーグル

昭和にはなかった?装備です(あったのかもしれませんが、使った記憶はありません)。

分析の方針に従って
謎の液体と試薬の反応を見ます

それぞれの班の分析方針は違いますから、

試薬を落とした結果も
それぞれの班で
違ってきます
この反応を見ると
これは…

班の中で議論が続きます。そして、どうしても決められないときの奥の手、

炎(えん)
色(しょく)
反(はん)
応(のう)

さて、各班とも分析特定できたでしょうか。

実験結果をスマホで撮影し
個人端末でレポートを仕上げてネット上で提出

生徒は、自ら考えて組み立てた実験ですから、そこで使う様々な反応式は覚えさせられたものではなくなりますね。暗記とは真逆の頭に深く刻み込まれる授業だなあと感心しました。

みっちりもぎったんもない、先生も生徒もにっこりの授業でした。